受賞作品詳細

審査員の選評は内容の核心に触れているものもありますので、
作品をお読みになった後にお読み下さい。

星新一賞

一般部門 グランプリ(星新一賞)

「OV元年」

之人 冗悟

<小学校・中学校>ドナルド・キーン&浅見光彦の地元東京都北区西ヶ原の普通のとこ
<高校>東京都板橋区の普通の都立
<大学>東京都新宿区都の西北の自由な大学の第一文学部の英文科
<職歴>テキヤ(フーテンの寅さんの本職をバイトで2年ほど体験)+相場の会社(客として入るのは怖いから社員として内側から覗き見一年弱)+教師(雇われ英語塾講師を約4年、以後独立して儲からぬ英語塾&英語学習教材作りを20年以上続けて今日に至る;英語ばかりじゃ飽きるので、途中「日本の古文・和歌修得WEB教材」完成、その他、発表の場もなく書き散らしたお蔵入り文物山ほどアリ)
<今後の予定>4年以内に「英語修得WEB教材」完成の後、楽隠居

< 作者コメント >
一個人ならぬ一種族全体の壮大な歴史物語を一万字以内で駆け抜けるというかなり無謀な超短距離マラソンの行間に、作者が考える「星新一的なるもの」の精髄を欲張りに凝縮した幕の内弁当みたいな作品…だから、その行間のスキの多さに「何これ?」と思われるかもしれません…その間合いを読者の想像で肉付けした時にまた新たに見えてくる各人各様の想像的物語場面で補って初めて完結する叙事詩…それが『OV元年』

審査員コメント

  • 恩田 陸

    人間の機能の補完装置だったものを別の用途に転用していくというところにリアリティを感じました。語りも巧みで、ラストに至るまでの過程がいかにもありそう。全体的に最も完成度の高い作品でした。

  • 小島 秀夫

    「オムニバイザー」というガジェットに新味はないが、報告書形式の構成によって展開される語りがいいです。そこに細かいアイディアがあり、単調になりがちなワンモチーフにバラエティを与えています。あえてのオチも星新一作品を彷彿させ、好感が持てます。

  • 本川 達雄

    オムニバイザーの使用感想文を連ねていくことで、どんな機能が付け加えられて世の中がどう変わっていったかを具体的に伝えていく手法は、まことに読ませる。グランプリに選ばれるだけのことはある。ただし、オムニバイザーのアイデアそのものは、それほど新規性があるとはいえないが。他の応募作品でも気になったのだが、人間の嗜好も思考も、ある理想に全部そろうものだという前提を置いているが、そういうイデア主義が理系というものだとすると、考え方として、どうも底が浅いように評者には感じられた。

  • 矢野 創

    シニカルかつユーモラスな視点で人類絶滅を描く試みが、報告書と注意書きとバージョン番号で物語を進行させる文体で成功している。OVが1世紀で人類を滅ぼす、異星人の究極の侵略兵器だったというオチが星新一的。

  • 玉城 絵美

    本作品のレビュー記述はストーリテリングの点において現代らしい新規性がありました。レビューだけで登場人物像、社会変化と人類の進化を明らかに表現していました。

  • 滝 順一

    報告書形式で全体状況を説明しつつ読者を引きつけ続ける筆力には感心しました。落ちの部分は、正直なところ、「またか!」という印象がなくはありませんが、星新一的世界なら許されるのだと思います。

作品は日経ストアで無料配布しています

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一般部門 優秀賞(JBCCホールディングス賞)

「天資に手を伸ばす」

良野 一

東京大学卒・同大学院修士課程修了(情報理工学)。民間企業に勤務。

< 作者コメント >
このたびは栄誉ある賞をいただき光栄です。関係者の皆様に感謝申し上げます。科学技術というものはいずれ、芸術、さらには人間の才能といった部分にまで影響を与えるようになる。そう考えたのが本作の始まりでした。そこに影響が及んだら、もう人間の感情に踏み込むのは必然です。どうぞお気軽に、楽しんで読んでいただきたく思います。

審査員コメント

  • 恩田 陸

    身体の一部と引き換えに才能を手に入れるという生々しいお話に、どうしようもない人間の欲望や性といったものを感じて、強烈な印象を受けました。実際に、人間の身体や感覚の拡張やサイボーグ化が進みつつある現在、自分の中に潜む願望に気づいてもやもやしたものを感じ、いろいろなことを考えさせられました。

  • 小島 秀夫

    作曲家の主人公がライバルを超えるために、体のパーツと引き換えに才能を得る。次第に体の部位を失っていくというストーリーが怖くていい。実はライバルにとって、自分が最大の理解者となる展開は、ブラックながら暖かさを感じ、深い味わいがあります。

  • 本川 達雄

    耳さえ感度がよくなれば、よい作曲家になれるという設定に違和感を感じた。もちろん、プロはみな耳以外でも音楽に関わる能力は高いレベルにあるから、あとは耳さえなんとかなればあの人に追いつけるという情念で身を削っていくという物語であることを作者がねらっていたのなら、とても悲しい、いい話だとは読めるのだが。

  • 矢野 創

    SFの定番である身体能力拡張で、音楽の天才との才能の差をライバルが代償を払いながら埋める、読者に強烈な印象を与える作品。ただし身体交換した主人公の肉体の描写が乏しく、科学的な展開がもう少し欲しかった。

  • 玉城 絵美

    人間拡張(Augmented Human)という難しいテーマにも関わらず、嫉妬により人間拡張を欲しつづける凡人のヒューマンドラマが上手く絡み合っています。

  • 滝 順一

    才能というものは比較される宿命にあるのだろうか。科学的は裏付けは横に置いて、才能ある人たちが競い合ってより高い才能の開花を目指すあくなき競争心、向上心を浮き彫りにした点を評価しました。

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一般部門 優秀賞(東京エレクトロン賞)

「パーフェクト・ケア」

澤 英明

1967年 東京都出身。自営業。

< 作者コメント >
学生の頃、国語が大嫌いで読書とは無縁だった私が、唯一読んでいたのが星新一作品でした。「どんな事物にも多面性があり、奥行きがある--それがたとえ日常の些細なことだとしても。だから、常識や先入観に囚われず、様々な視点からものを見なければいけない」星作品は、科学の面白さと共に人生哲学を私に教えてくれたような気がします。今回の受賞を大変光栄に思います。ありがとうございました。

審査員コメント

  • 恩田 陸

    技術の二面性を示唆する興味深い作品です。我々がこの先何を選択すべきか、どう選択すべきか、思わず自分に引き付けて考えてしまうところ、すべての人が自分の問題として共感できるところがよかったと思います。

  • 小島 秀夫

    少子高齢化の進んだ社会に福音をもたらす、完璧なバーチャル介護システムというアイディアを核に、「介護の次」という現代に通じる問題にたどり着く展開がいい。科学がもたらす善悪の両面を描いてる点が素晴らしいです。

  • 本川 達雄

    超高齢社会の問題を考えさせる作品。作品を離れてどんどん考えてしまった。痴呆症になった人は不幸だからコンピュータにくっつけて幸せにしようという発想が前提にあるが、痴呆の人が不幸だと感じているのだろうか?最後で博士が安楽死問題で悩むが、そもそも、身体を麻痺させてコンピュータにつなぐのは、身体を機能させないようにするということであり、それは、半分は殺すことを意味しているのではないだろうか?この作品に限らず、こういう、そもそもという疑問を吟味していない作品が多く、そのような能天気さが理科系の発想だとすると、評者としては問題だと感じた。あれやこれや、この作品のつっこみどころを含めて、いろいろと考えさせられ、楽しませていただいた。

  • 矢野 創

    認知症介護の解決策を研究者が生み出したものの、意図に反して完璧な安楽死装置として使われてしまう結末が、強い読後感を与える。科学技術のアウトプットと社会の要請によるアウトカムの乖離を、丁寧に描き出した。

  • 玉城 絵美

    VR+介護=バーチャル介護という技術自体はそこまで新規性があるものではないのですが、バーチャル介護が普及した世の中の反応を通して、現代日本の恐ろしい欲望を明らかにしている所が後味を残させる作品でした。

  • 滝 順一

    バーチャル介護施設のアイデア自体はそれほど目新しくはないものの、科学者の開発意図とは異なる形で成果が利用される現実や高齢化社会が行き着く先に提示される倫理的課題を描いた点で作者の問題意識の鋭さがうかがえる。

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一般部門 優秀賞(アマダホールディングス賞)

「水仙」

木山 省二

1967年金沢大学医学部卒 医学博士 医師として勤務し定年後に小説執筆を開始
2012年「じろう」で第8回銀華文学賞佳作
2014年「水の中の笑い声」で第10回銀華文学賞奨励賞
      文芸思潮55号 アジア文化社
2014年「重四郎始末」で第4回立川文学賞佳作
      立川文学Ⅳ けやき出版
2015年「丁字饅頭」で第5回立川文学賞佳作
      立川文学Ⅴ けやき出版
他に
「夕立のあと」江古田文学86 江古田文学会 星雲社
「ぎやまんの風鈴」学研(2015年自費出版)がある

< 作者コメント >
漢和辞典では、匂いは香気で、臭いはくさい香りに区別しているようですが、では納豆のにおいは人によって匂いと臭いに別れるのでしょう。ご馳走も空腹時は匂いで満腹時は臭いになるのでしょうか。昭和30年代に「おならの科学」が流行って、浴槽でおならをビンににとって火を点ければ燃えるか否かを議論したことがあります。インドールやスカトールなどの芳香族は恐らくこの頃の化学の授業で教わったのだとおもいます。

審査員コメント

  • 恩田 陸

    特に何か事件が起きるわけではないし、サスペンスもないのに、妙に印象に残る作品でした。匂いをテーマに時代劇仕立てにしたところも面白い。視点が独特なので、この先どんなものを書くのか興味を感じました。

  • 小島 秀夫

    文章も構成も手馴れていて、完成度は1、2を争うのではないでしょうか。理系的なアイディアによるオチも用意されていますが、「星新一賞のショートショート」として、という点で評価が割れました。時代小説の掌編として良作です。

  • 本川 達雄

    これがSFなの?この落ちのためだけに書いたように読めたけど、落ちがこれ?と、唖然とさせられた。そして、なんだか記憶に残ってしまった。すれ違ったときに、そこはかとなく香りがして、それが記憶に残っている感じで、はからずも受賞作として投票してしまったが、まんまと著者にはめられてしまったなあ。さすが!

  • 矢野 創

    「センスオブワンダー」を保持しながら、主人公が自ら謎解きする姿を描けば、過去を舞台にしてもサイエンス・フィクションになることを示した異色作。文筆技術は高く、様々なジャンルの物語が書ける作者と思われる。

  • 玉城 絵美

    あね様の良い匂いの元を謎解く主人公の必死さや、謎を解き終わった時の気持ちの変わりようがSFでは珍しい文体で記述されており、良い意味でのミスマッチさがある作品でした。

  • 滝 順一

    星新一賞としては異色作である。賞にふさわしいかどうか議論があるところだが、水仙の香りとともに化学の香りがそこはかとなく漂う点を評価した。語り口がうまい。

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一般部門 優秀賞(日本精工賞)

「赤い靴」

本間 かおり

学歴:東京大学法学部卒、東京大学大学院社会科学研究科了、シカゴ大学大学院国際関係論了。職歴:三菱電機役員理事、千葉大学教授、公正取引委員会委員、日本大学法科大学院教授、技術と競争ワークショップ代表。著作歴(専門分野除く):「アルトワ伯爵夫人の晩餐会」、「爆弾と秘薬」、「ラインの蒲公英城と白い女」(以上長編―AmazonKDP)、「ママ」(短編―第2回星新一賞)。

< 作者コメント >
1948年製作のイギリス映画「赤い靴」のなかのバレエ・シーンは、アンデルセンの原作をベースにして、聖餐式の日に赤い靴を履くというささやかな罪で神罰を受け、死ぬまで休みなく踊り続ける少女を描いている。これではあまりにかわいそうなので、わたしは、原作とは全くちがうメタファーSFを書いて、少女を、自分のアイデンティテイを求めて時空を遍歴する女として復活させた。

審査員コメント

  • 恩田 陸

    アイデアがどうこうというよりも、時空を超えて宇宙のあちこちで踊り続けるというイメージが強烈に焼きつきました。回り続ける、踊り続ける、というのが天体の動きとと二重写しになっていて、とにかく目に浮かんだ情景が魅力的でした。

  • 小島 秀夫

    色彩、動き、ヨーロッパ風の舞台装置など、ある種のノスタルジーを醸し出しています。りんたろう氏等のクリエイターに映像化してほしい作品です。バレエの赤い靴という小さなガジェットが、少女のダンスの回転を介して宇宙大のお話に広がるイマジネーションが素晴らしい。

  • 本川 達雄

    正直言って、ストーリーについていくことができなかった。くるくる回っているこまが、あっちにふらふら、こっちにふらふら、読んでいる方も目が回ったのだが、それでもこのこまは倒れずに最後まで行ってしまったのは、力技で、それなりに評価できる。天体ものが少なかったことも評価した理由の一つ。

  • 矢野 創

    踊りながらハビタブル惑星を瞬間移動し続けるという強烈なイメージを、軌道力学とバレエダンス双方が持つ躍動感で描いた作品。惑星名やバレエ動作の多彩な名前が頻出する「読者の置きざり感」も疾走感の演出に貢献。

  • 玉城 絵美

    タイム・トリップと人類の結末が前半部分のバレエと不思議な調和を生み出していました。バレエの描写が何を表現しているかについて、もう少し読者にヒントを提示してあげると、より親切かもしれません。

  • 滝 順一

    銀河宇宙に拡大した人類文明の虚栄と退廃を回転し続ける踊り子が象徴する印象深い作品。バレエ用語が門外漢にとっては余計な感じがするのは、作者の計算のうえの作戦だと受け取った。

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学生部門 グランプリ(星新一賞)

「バベル以後」

佐久間 真作

ワセダミステリクラブ所属

< 作者コメント >
幼少期のごった煮のような読書体験の中でも星新一先生の作品たちは自分の核をなす存在だったと記憶しており、そんな星新一先生の名前を冠した賞を頂いて恐悦至極以外の言葉がありません。また、拙作はワセダミステリクラブなるサークルの企画でお題を頂いた事がきっかけで書かれたものなので、今回なされた評価の九分九厘はワセダミステリクラブに還元されます。是非読んで皆さんに少しでもニヤリとしていただければ幸いです。

審査員コメント

  • 恩田 陸

    「言葉の壁」をそのまま物理的な障壁にしたというアイデアにまずびっくり。しかもそれが情景として浮かぶリアルな描写もわくわくさせられました。「言語」という、日々誰もが直面するものをお話に仕立てたところも意表を突くと同時に身近に感じられて新鮮でした。

  • 小島 秀夫

    「言葉の壁」という比喩でしかないものが物理的に存在するというアイディアがユニークで素晴らしい。自動翻訳アプリが壁をつくるという発想も含め、これには「やられた!」と嫉妬を感じました。現代社会に警鐘を鳴らすテーマや、主人公の語り口もよかったです。

  • 本川 達雄

    脳の中のインプラントにより、現実に壁ができてしまった世界の話。頭で言葉を発しただけで壁という物理的実体を創ってしまえるのは神(たとえば「光あれ」と言ったら光が生まれたように)。神を持ち出したら科学にはならないからSFにもならないのだが、そこを背後に隠してSFらしく読ませてしまうところはさすが。バベルの壁というアイデアもきわめて斬新。ただし落ちはなげやり。

  • 矢野 創

    「言葉の壁」を物理的に作り出してそれを乗り越えていくという、独創的な世界観を評価する。SF映画やゲームのシリーズ化ができそう。一方でプロットありきで後付のような設定と、やや乱暴なエンディングが残念。

  • 玉城 絵美

    魅力的な技術進歩に読者を引き込ませ、想像力をかきたてさせる内容でした。私も一気に引き込まれました。バベルとなったサーバがなぜ暴走したのかという点まで表現できれば、さらに深みのある内容になったと思います。

  • 滝 順一

    新鮮なアイデアを評価した。一人称で自転車に乗りながらのモノローグという書き方もうまい。なぜこれほど不条理な世界が出現し、なぜその再構築を人々が望まないのか、説明不足を感じるが、ラストも含め、そうしたやや投げやりな世界観が独特な雰囲気を醸しているのも面白い。

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学生部門 準グランプリ

「天使と重力」

津久井 悠太

1992年生まれ。栃木県那須町出身。東京大学工学部建築学科卒業。2017年現在、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻に在籍。

< 作者コメント >
いつの間にか身体の内とも外ともつかないところに空気のように漂っているテクノロジーを、人間の心地よいようにうまく囲い込むのが、僕が専攻している建築学の仕事のひとつです。小説を書いてみようと思い立ったときも、そのように環境化されたテクノロジーが念頭にありました。星新一に倣って、どこか寂しくもユーモラスな未来の生活を書くことを目指しましたが、それが読んでくださった皆さんに伝われば大変嬉しく思います。

審査員コメント

  • 恩田 陸

    小説としての完成度がめちゃめちゃ高いです。SF小説を「思索小説」と呼ぶのであれば、この作品はその目的を達成していると思います。新しい技術、それが人間の思考や行動にどのような影響を与えるか。それを考え抜いた姿勢をとても高く買いました。

  • 小島 秀夫

    文章、構成ともに完成度が高い。最後まで読ませる力があります。駆け出し俳優が性格改変プログラムを使用して----というお話ですが、書く力のある人なので、主人公の設定や展開に、ひねりを加えたら、より面白くなったはずです。

  • 本川 達雄

    筆者の筆力は瞠目に値する。ただしストーリーとしてはあまりにまっとうで、「ああそう」っていう感じだった。「優秀さとは・・・習慣なのだ」とはアリストテレスの主張であり、この習慣養成器は現実に開発してもいいアイデアで、アリストテレスも喜ぶんじゃないのかなあ。

  • 矢野 創

    ライフログ技術の可能性を舞台装置にしつつ、性格改変の主人公に俳優を配することで、芸術と内面の関係に迫ろうとした意欲作。設定・プロット・文章・結末の余韻、いずれも星のハード作品を想起させ、完成度は高い。

  • 玉城 絵美

    特段衝撃的な未来ではなかったのですが、主人公の心境変化が丁寧に表現されており、高い没入感で読み進められました。一旦別の性格になりかけることによって自身を知るというプロセスが俯瞰や客観ではない自己理解につがっており、技術提案だけではない未来の感じ方を提示しています。

  • 滝 順一

    性格改変は投資であり人工知能による人間のオンザジョブトレーニングとして行われる。それは決して夢物語ではなく現実にありそうな世界を描いた点に魅力を感じる一方、主人公が俳優であることの面白さが前面に出たらもっと面白かったかもしれない。

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学生部門 優秀賞

「Frameout」

藤田 健太郎

1996年東京生まれ。父の仕事の関係で、小学校3年生から中学校3年生までの期間をタイ、インドネシア、ベトナムで過ごす。日本の高校に編入・卒業した後現在慶応義塾大学環境情報学部に在籍中。

< 作者コメント >
星新一先生が「ショートショート」という枠組みを広めてくださらなければ、私はこの物語を完成させることができませんでした。私の言葉を支えてくれた全ての方々に、心よりの感謝を捧げます。本作は2046年が舞台ですが、現代のどこにでもある、どうしようもない景色から出発しています。人間や、人間の作る社会が常にフレームを限定するのは、決して外側に対する盲目を許すためではなく、その発想を豊かにするためであるはずです。

審査員コメント

  • 恩田 陸

    いろいろな読み方のできる問題作だと思います。読んでいて、不思議とざわざわ、ざらざらする感触がありました。それは、この作品の扱っているテーマが人間の存在や社会について根源的なところに触れているからだと感じました。

  • 小島 秀夫

    心と身体という普遍的な問題を、人工知能搭載のロボットが進学校に転入してきて虐められる、というユニークな設定に落とし込んでいる点が、新鮮でした。文章も構成も練られていて、ブラックなラストも皮肉が効いています。

  • 本川 達雄

    正直言って、ロボットのフレームという考えに無知な評者にとっては、SFとして何を問題にしているかがわかりにくかった。人間のフレームとは何かを、ロボットを通して考えさせた点は評価したい。ただしいじめという観点だけでしか見ることのできなかった評者は、結局、強いものが弱いものをいじめ、弱いものがもっと弱いロボットをいじめと、ごくふつうの話になり、まったく救いようのない暗い話で、後味が悪い。

  • 矢野 創

    未来の中学校でロボット生徒がいじめにあうシュールな設定は、現代日本ならでは。フレームが代わると変化が生まれた展開に納得。ただし文章は読みにくく、フレーム問題を知らない読者が主題を汲み取るのは難しい。

  • 玉城 絵美

    AIの社会適応といじめというテーマかと思いきや、「枠」が思考を決めている概念が浮き上がってくる内容でした。「枠」を改変したAIと「枠」に縛られる主人公の後半部分は、学術的にも納得いくものでした。個人的に一番大好きな作品です。できれば、もう少し前半に伏線を入れて丁重に「枠」を記載してほしかったです。

  • 滝 順一

    人物の評価は外見で左右される。認知のフレームを変えることで人の評価は変わるものだと作者は示したいのだと受け取った。そうであるなら悲劇的な結末でなくともよかった気もするが、鮮烈な幕切れがひとつの魅力でもあるのかもしれない。

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ジュニア部門 グランプリ(星新一賞)

「ボクのしょうかい。」

上西 那智

立命館宇治中学校3年生。

< 作者コメント >
受賞のお話を聞いた時は、ただただ驚くばかりで、今でも信じられないという気持ちでいっぱいです。幼い頃から絵本や本を読み漁り、物語を読むことが大好きでした。今回は自分のアイディアや言葉で物語を作る側になりましたが、難しくも楽しい、物語を書くという作業に没頭しました。まだまだ拙い部分がある私の小説を選んで頂いて本当に感謝しています。これを機に、たくさんの文学作品に触れていきたいです。

審査員コメント

  • 恩田 陸

    決して目新しいオチではないものの、するすると読まされるこの語り口のうまさは驚異的でした。タイトルの「ボク」の正体について一言も言及することなく読者に分からせる描写力もすごい。まさにショート・ショート。そこはかとなく漂うユーモアにも並々ならぬセンスを感じました。ううむ、ジュニア部門、恐るべし。

  • 小島 秀夫

    具体的な世界の描写はないのに、話にひき込まれていきます。「ボク」という語り手の正体は誰なのか? ペットとは? モノローグによって読者の想像力を刺激し、エンディングまで読ませる力量が素晴らしいです。

  • 本川 達雄

    二枚のショートショート。説明しないで謎かけしていくストーリーはあざやか。ジュニアでこれだけ書けるのはすごいと思う。もちろん突っ込める点はいろいろある。ゴキブリの元の大きさって何? 生きるために必要なエネルギーって何?などなど。理系マインドは、やはり理科の事実をしっかり押さえておくべきで、この筆力でそこを気にすれば、将来もっとすばらしものが書けると期待できる生徒さんです。応援してあげたい。

  • 矢野 創

    子供らしいアイディアと、ゴキブリの独白という高度な文章力、星新一風の世界観とオチがすばらしい。地球絶滅を共に生き残れることで、人間が(ペットとしてだが)ゴキブリと和解?できててよかった!

  • 玉城 絵美

    原稿用紙にかわいい文字とかわいい文体で語られる科学の発展、人類と主人公の謎がじわじわ理解されるごとに手汗が出ました。いつもとは違う意味で感情が大きく揺さぶられました。全てが計算高く、末恐ろしい著者です。

  • 滝 順一

    読む人の想像力を刺激する文章のうまさに感心しました。コアになっているアイデア自体はそれほど目新し区はないと思いますが、理系的思考を飛び越えた世界観に読者を引き込む点を高く評価しました。

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ジュニア部門 準グランプリ

「クマムシ人間」

長塩 皓大

神戸大学附属中等教育学校3年生。

< 作者コメント >
このような大変素晴らしい賞を頂いても良いのかどうか、未だに自分の中で疑問を感じており、信じきれていない。自分は今まで作文の課題で賞を獲ったことが一度もなく、今回の作品を書き上げた時も賞をもらえるような作品だとは考えてもいなかった。ただ、「どうせ自分で作品を書くのなら、面白いオチをつけたい。」と思って書いたので、審査員の方に「面白いオチだ。」と感じて頂ければ受賞よりも嬉しい。

審査員コメント

  • 恩田 陸

    クマムシの特性から始まり、技術の進歩とそれによってもたらされる世界について、作者がしっかり想像してお話を作っているところがすばらしいと思いました。最後のオチもよくできています。この若さでアイデア、論理的思考、お話作り、ときちんと三拍子揃っていて安定感は抜群でした。

  • 小島 秀夫

    クマムシと融合して最高に頑強な生物になった人類、という魅力的なアイディアが冒頭で披露され、人類を待ち受ける運命が語られます。ラストのオチも微笑ましく、最後まで一気に読みました。クマムシの設定にもうひと工夫あればさらに面白くなったはずです。

  • 本川 達雄

    ジュニアらしい作品でほほえましい。これはグランプリ作品にもいえることだが、いろいろな可能性のある中で、どれが確率的に高いかをきちんとおさえながら話を進めるのが理系マインドだと思うが、そこはやはりジュニアでは足りないところがある。だから突っ込みどころがいろいろあるが、でもそこまで含めて笑って許せるところが、この作品のよいところ。

  • 矢野 創

    現代の子供のクマムシ好きを証明した作品。実際のクマムシの生態からの飛躍はあるものの、地球環境問題や恒星間飛行というSFの定石を、短い文章の中でまとめた手際の良さ。かわいらしいオチも星新一的。

  • 玉城 絵美

    狙っているのかわからないがアイデアと物語の展開が新鮮でした。私の中でも空前のクマムシブームが起きました。読了後3日ほどはこの作品のこと以外考えられなくなりました。

  • 滝 順一

    読んでいて思わず笑い出してしまう作品ですね。不老不死への人々の盲目的な礼賛、ブームに流されがちな社会を皮肉っているのが楽しい。

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ジュニア部門 優秀賞

「百二十キログラムの命」

金本 心菜

2001年4月生まれ。三姉妹の次女。
足立区立第四中学校3年生の15歳。美術部に所属。

< 作者コメント >
受賞のお知らせを聞き、とても驚き正直いたずらを疑ってしまいましたがこうして賞をいただくことができ大変嬉しく思います。私は理科が得意というわけではなく、小学生向けのサイトなどを参考にしながらこの小説を書き上げました。自分なりに、星先生のように自由な発想を大切にしたつもりです。

審査員コメント

  • 恩田 陸

    破天荒なアイデア。肥満がスタンダードでお得な世の中を嘆く痩せた人間、という設定から始まり、まさかの結末に。よく考えると突っ込みどころ満載なんですが、このとんでもないアイデアの持つパワーに惹かれました。人間の体重と星の重さというまさかの組み合わせが面白い。読んでから見ると、タイトルもなるほどと思わせられました。

  • 小島 秀夫

    魂の重さは21gという説があるが、こちらは120キロも体重がある人間がどうなるか、というお話。バーという狭い場所を舞台にしているのに、人が宇宙に飛んでいくというビジュアルが目に浮かびます。人間と宇宙の関係というスケールに展開するのは見事。

  • 本川 達雄

    寿命の尽きる日に太陽に突っ込むという、悲壮な話なのだが、すごく笑える荒唐無稽な設定がすごい。体重が重いほどたくさん寿命がもらえ、そのわけの種明かしが、太陽の寿命を延ばすためという発想は、まことにユニークで評価できる。

  • 矢野 創

    「2月30日」でさりげなく、一年が長くなった未来を示唆。恒星の寿命が質量で決まるという科学知識に、人間の肥満を結びつける想像力が独創的で、脱帽した。バーを舞台に語らせたのは、星新一風。

  • 玉城 絵美

    Sci-Fi作品でありながらも詩的な描写が効果的に盛り込まれている点が良いです。現代では起こりえない風景を作品を読みながら想像できるのは、ジュニア部分とは思えない技術力でした。

  • 滝 順一

    アイデアが面白い。人間の重さなんて太陽の質量に比べてどれほど?と思わず突っ込みたくなるが、ファンタジーとしての楽しさを評価しました。作者が意図したものかどうかはわからないが、誤字が気になりました。

作品は日経ストアで無料配布しています

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ジュニア部門 優秀賞

「ペンと人生のジャンル」

李  宰佑

2001年生まれ。立命館宇治中学校在籍。趣味は読書、ピアノ。年間100冊以上をめどに時間の合間に本をむさぼり読む。志望の大学はボストン大学で理系を中心に勉強したいと考えている。

< 作者コメント >
今回、まさか自分が選ばれるとは夢にも思わなかったので受賞したと聞いたときは大変驚きました。昔から、最後に大どんでん返しのある本もしくはSFでアンドロイド系(『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』など)を好んで読んでいたのでこの作品では二つの要素を混ぜようと努力しました。自分ではまだまだ満足のいく作品ではありませんが、読んでくださる皆様がどんでん返しに合ってくれれば光栄です。

審査員コメント

  • 恩田 陸

    何か新しい技術が出現した時に、じゃあそれは社会にどのような影響を与えるんだろう、という思考実験をするのがSF小説の役目のひとつだと思います。この作品は、それがきちんとできていました。最後の皮肉なオチもすばらしい。

  • 小島 秀夫

    スマホやアプリ全盛の時代になっても、「ペン」という道具によって人生をコントロールされているという未来観がいい。語り手の正体がオチに結びつく構成がうまく、読み終わったとき、ブラックなエンディングにゾクッときました。

  • 本川 達雄

    落ちがあざやか。ただし、もっていると、望みの人生が送れるペンというのがこの話の設定なのだが、それはどういうメカニズムで可能になったのかには一言もふれていない。理系的な作品なら、たとえありえなさそうでも、どうしてそんなものが作れるのかのメカニズムについても、一言ふれて欲しかった。そうでないとただのよくできた荒唐無稽な話になってしまう。

  • 矢野 創

    AIものが多い応募作の中で、オチが星新一的ブラックなテイストで秀逸。携帯、タブレットなど接続デバイスが多様化する中、あえてペンを選び、タイトルに「ジャンル」と書くあたり、作者の文学好きがうかがえる。

  • 玉城 絵美

    新規技術による世界、社会とヒトの変化を短い文章のなかに上手く盛り込んでいます。同時に、いつのまにか技術に取り込まれていくヒトのさまは、インターネットやスマートフォンの普及に近いものがあり、読者を納得させる強さを感じさせます。

  • 滝 順一

    知能を備えたペンによって人々の運命が左右されるという人工知能ディストピアを描き、落ちも効いている。なぜペンなのか、どのように人々の運命を定めるのか、その目的(意図)は?などもう少し膨らませてもらえたらもう一ランク高い評価になった気がします。

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ジュニア部門 優秀賞

「不老不死検定」

山本 征範

2003(平成15)年生まれ。現在東京都世田谷区立桜木中学校1年在学。学校では園芸部に所属。得意科目は理科。苦手科目は体育。趣味は怖い話を書くことと、将棋。

< 作者コメント >
僕は、星新一先生の作品を読むことと、物を書くことが大好きなので、このような賞をいただけたことを嬉しく思います。検定は、中学生の僕にとって身近な存在です。また、不老不死というのは僕が昔から興味を持っているテーマで、不老不死になる人を選抜する方法が検定だったらどうなるのだろう、とふと思いつき、書いたのが「不老不死検定」です。これからも、様々なものに興味を持って、面白い物を書けるようになりたいです。

審査員コメント

  • 恩田 陸

    人類の進歩を促す技術、それに過剰に反応する人間たち、その先に待ち受ける皮肉なオチ、ととても星新一的な作品です。作者はかなり星新一作品を読み込んでいるのではと思わせるリスペクト感がよかったです。

  • 小島 秀夫

    試験という作者にとっても身近な現代的なテーマを、未来の社会に置き換えて考察しています。これはSFが得意としてきた考え方です。その上で、アイディアに振り回されず、自分の考えが書かれているのが評価できます。

  • 本川 達雄

    落ちもあざやかで、話の語りっぷりもあざやか。ただし何でそんな展開にならなければならないのか、ほかの可能性のほうがずっと高いと思わせるストーリーである。理系というなら、いろいろなことの起こる確率をくらべて、だからこの方向に話が進むということを納得させて欲しいなあと感じた。

  • 矢野 創

    新技術をとりまく国家の意思、市民生活の変化など、物語の構成、皮肉なオチをこめた結末、さら「エヌ君」の死など、全編を通じて星新一作品へのリスペクトとテイストが感じられた作品。

  • 玉城 絵美

    ストーリーテリングという点で、星新一賞に相応しい作品でした。もしかしたらSci-Fiの王道展開かもしれませんが、だからこそ気持ちよく読めます。

  • 滝 順一

    理系的思考という点では物足りなさを感じないでもありませんが、星新一的なテイストを評価しました。不老不死の勉強のため生活がふしだらになるなど滑稽さとシリアスさのバランスがほどよいと思います。

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第4回 日経「星新一賞」総評

 第4回目の星新一賞の審査は、まず幾つかの質問から始まりました。
 理系的な思考とは?星新一賞に於ける星新一らしさとは?あるいはまた、ショートショート、SFという要素は、どれくらい考慮すべきか?
 毎回、このような質問、議論から始まる。当然のことです。それらは評価の基準となる要素だからです。そして、そうした質問に対する私たちからの答えは一つしかありません。定義もルールも全て審査員の個人個人の判断にお任せする。責任を放棄しているように思われるかもしれませんが、これは私たちにとって、最も大事なルールなのです。この新たな賞を創設するにあたって、私たちが考えたのは、これまでにない形の賞にするということでした。
 様々なバック・グラウンドの方々に審査をお願いするというのは、皆さんの専門性を尊重するということでもあります。そして自由に議論し、審査していただくためには、固定された枠組みや規則は不要なのではないか。そう考えているからです。
 その結果として、星新一賞は、これまでとは異なった形の作品を選んで来ました。ただ今回は、審査に入るまでの質問や疑問に、これまでで最も多くの時間がかかったように思います。どうなることかと、司会進行をつとめるわたしとしては、少々不安になりましたが、その後の審査は大変順調に進行できました。審査員の方々が、それぞれの作品に対して、明確に思うところを語っていただけたからだと思います。
 この賞の審査で特徴的なことは、事前の評価が、それぞれの専門分野からの発言や議論の中で、大きく変化していくことだと思っています。それはとてもスリリングな経験をもたらしてくれます。凡庸に思えた作品が専門的な知見からの指摘で、突如として新たな側面を見せてくれるのです。今回も幾つかの作品は、そうした議論の中で、評価を高めていきました。もちろん逆に、良いと思われた作品が、専門的に見ると、大きく間違っていたり、誤解があったりしたために、評価が低くなってしまうこともありました。
 応募してくださる皆さんへのアドヴァイスですが、作品の中で扱う科学や理論に関しては十分に考え、調べた方が良い結果につながるように思います。もちろん、だからと言って、論文を書くのではありませんし、あるいは、そうした論文の引き写しも意味がありません。正しいけれども、アイディアがつまらなければ、やはり低い評価にとどまってしまうでしょう。審査の過程ではっきりしたことは、新鮮なアイディアを審査員の方たちが強く求めているということでした。難しいことですが、そこにこそ面白さがあるように思います。
 毎回、似たようなアイディアや素材が出てきます。今回で言えば、AI、VRに関わる作品が多かったように思います。第一回では3Dプリンターものが多かった記憶がありますが、今回はまったくありませんでした。時代が急速に進歩しているのが実感できるように思います。その時の科学や技術の話題が応募作品にビビッドに反映されるのも、この賞の特徴であるように思います。
 毎回、ジュニア部門の作品が審査員の皆さんには好評なのですが、今年の傾向としては、過去にあった暗い感じの作品よりも、ポジティブな印象の作品が多くあったように思います。もちろん、だからと言って、それが明るい時代になったということを示しているとは思いませんが、どことなくほっとするような気分にさせてくれるのも、事実だと思います。審査員から、ジュニア部門の年齢の範囲が広すぎるのではないか、という指摘がありました。確かに小学一年生と中学三年生の作品を同列に扱うのは、若干の無理があります。今後の課題としたいと思います。
 今回の学生部門は、基本的にレベルが高かったという評価がありました。前回から新設した部門ですが、その意味があったように思います。学生部門はこの賞にとって極めて大事な部門です。未来に一番近い層がここに属しているからです。思い切った新鮮なアイディアの作品を期待したいと思います。
 一般部門は毎回激戦になります。最も多くの時間をかけて審査される部門です。それは同時にかなり厳しい意見が飛び交う場でもあります。事前に高い評価を受けていた作品が専門的な見地からして認めがたいということで、賞に洩れた作品も幾つか出ました。小説としての完成度だけでは無く、その科学的な知見や論理が問われていくわけです。ただ、その多くが、ちょっと考えれば避けることが出来るようなものであったことも確かです。もったいないと言う気がしました。
 毎回、同じことを感じるのですが、審査員の方々の知見の素晴らしさと深さには、感銘を受けるとともに、感謝したいと思います。そして論議の中で、自分の意見に固執することなく、常に様々な意見に耳を傾け、柔軟に対応してくださる態度に今回も学ぶことが多くありました。
 応募してくださった多くの皆さんと、審査員の皆さんに改めて感謝したいと思います。

日経「星新一賞」最終審査会
 司会進行 鏡 明

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