受賞作品詳細

審査員の選評は内容の核心に触れているものもありますので、
作品をお読みになった後にお読み下さい。

星新一賞

一般部門 グランプリ(星新一賞)

「Final Anchors」

八島 游舷

八島ではなく「ゆうげん」とお呼びください。専門は、翻訳工学(機械翻訳活用など)、翻訳教育、用語管理、英語学習法、実務日本語、創作理論。UWCイギリス校で国際バカロレア・ディプロマ取得。筑波大学比較文化学類卒業後、シカゴ大学修士。150%文系。アートナビゲーター(美術検定一級)。日本語でできることはすべて英語でも可能。(大学での講義、小説執筆、美術解説など)。目標はハリウッド映画の原作を書くことと創作論議座を持つこと。

< 作者コメント >
移動中はオーディオブックを聞くペーパー・ドライバーの私にとって、自動運転車は気になる存在。文系人間が理系文学にどう取り組めるか。読みやすい日本語作文力。柔軟な発想力。奔放な想像力。英語力と関連する論理的思考力。哲学的問題意識。文化的教養。本作はこれらを十分に活かしたとはまだいえない。出発点にすら立っていない。未熟な点が多々あるので精進したい。今は、次の作品のことで頭がいっぱいです。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    プロ並みの技術で最後までワクワク、ハラハラさせてくれる。近未来に起こり得るAI同士の鬼気迫る会話は、スピード感があり、サスペンスとしても一級。これを含む2~3作品のうちからグランプリが決まると思っていたが、やはりそうなった。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    人間とAIでは時間感覚が違うという設定だけでワクワクする。センス・オブ・ワンダーを感じたし、たちまち物語に引き込まれた。双方が助かる道はないことを先に宣言しサスペンス要素を生んでいる点も高評価。美しいラストにも唸らされた。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    0・488秒間の物語を、これだけハラハラと描いた作品は他にないでしょう。猛スピードで進むAI同士の会話。そのスピードに追いつかず、背景として描かれる人間。そして美しい自然の景色。この描写力に脱帽です。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    技術的なディテールが極めて適切である。人間には入れない短時間のAI同士のやり取りという設定も秀逸である。AIを通して見え隠れする人間模様が、人間とAIとの関係を考えさせるものであった。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    最初に読んだ時には、あまり高い評価を付けられなかった、いやそれを避けたのかもしれない。あまりにAIが人間的で、3秒間のドラマがあまりにリアルで… でも、それは、完成度の高い作品ということなのだろう。

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    お見事としか言いようがない。人工知能搭載の自動運転者が行き着く未来の姿をサスペンスに満ちた物語として提示した。人工知能に人格、人情味をもたせたことで物語が豊かになった。

作品は日経ストアで無料配布しています

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一般部門 優秀賞(JBCCホールディングス賞)

「Q.E.D.の後で」

小竹田 夏

国立理系大学卒業。博士課程修了。公務員を経て、現在フリー。

< 作者コメント >
ありきたりではない作品を書こうと、理系の基本ながら題材になることが少ない数学に、スポーツという一見関係なさそうなものを組み合わせました。着想から形にするのに数か月を要し、初稿ができたのが、締切数日前。初稿は大幅に字数オーバーしており、最後まで字数と時間との戦いでした。23時58分に投稿ボタンを押したヒヤヒヤ感が、今でも鮮明に蘇ります。栄誉ある賞を受賞でき、うれしく思います。関係者の皆様に感謝します。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    数学の難解な数式をボルダリングで物理的に解いていくという発想に、一発でやられた。作品そのものに〝発明〟がある。応募作のテーマがAIに偏る中、同じAIでも全く違う切り口で、おもしろく読ませてくれた。とにかくすごい作品だと思う。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    数式をボルダリングで証明するという発想など、そうそう思いつくものではない。そういう意味では、理系の人の頭の中を覗き込むような作品だった。すべてが証明された後は理想的な状態になるのかと思いきや、死が訪れるというオチにも感心させられた。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    数学とボルダリングの世界が、こうまで美しく合わさるとは。一見難しい内容ですが、だからこそ想像を掻き立てられました。真理を求める姿、その先を見つめる眼差しに、不思議な生命力を感じました。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    ストーリー設定が素晴らしく引き込まれる。数学をボルダリングに例え、ゲームとして表現している点は斬新であった。数学の死というテーマも、今のAIの進展とシンクロするものを感じさせる。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    全知全能の神はSF的には人生の楽しみを失ったようなものだ。それを数学という舞台で「生きているものは死に、死んだ者も生き続ける」という新規な概念をテンポよく導入展開した。現代の学問の在り方への警鐘にも通じる。

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    数学の証明とボルダリングを重ね合わせた設定に惹かれる。すべての証明が終わった究極のQEDの瞬間に「数学の死」が訪れるという世界観にも。無茶な要望かもしれないが、個々の数学分野や定理の関係性が示されていれば、なお面白かったはず。

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一般部門 優秀賞(東京エレクトロン賞)

「終末のハスラー」

弓永 端子

1991年生まれ。埼玉県立川越高等学校卒業、早稲田大学の天野研究室に所属、基幹理工学部機械科学・航空学科卒業、同大学院機械科学専攻修了。現在、民間企業勤務。

< 作者コメント >
これは唯の短編SF賞ではなく、星新一賞である。以上の事実に鑑みた結果、科学的要素に加えて「読みやすさ」「ユーモア」「オチ」の三拍子もまた必須であろうという仮説を提唱したのが二年前。本作品をもって証明できたことを大変嬉しく思います。小学五年生の時に移動図書館で星新一先生の「へんな怪獣」を勧めて下さった司書さん、そして本作品を評価して頂けた審査員の方々に心より感謝いたします。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    みんなで笑って審査したのは、今回この作品ぐらい。突飛でハチャメチャで、科学的、論理的には全然ありえないけれど、こういう作品も星新一賞らしいと思った。ユーモラスなおもしろさだけで持って行った感じ。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    月で地球に迫る小惑星を弾き飛ばすという、奇想というか、人を食ったような話は、古き良き時代のショートショートを思い出させてくれた。最後の1行で笑わせてくれるという点で、今回の作品群の中では随一だった。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    広い宇宙空間をビリヤード盤に、天体をビリヤード球に例える壮大な遊びココロと、最後のオチ。とてもワクワクする作品です。星空を見上げた時、真剣に計算するハスラーの姿が思い浮かび、クスッと笑ってしまうような爽快な読後感でした。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    なぜ小惑星が同じ大きさなのか。なぜスパコンがいつもタイミングよく故障するのか。大笑いしながらも、それ以外のディテールが妙に科学的で、大変理系的でかつ楽しませてくれる作品であった。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    全くの荒唐無稽世界であり、物理学の法則を全く無視していながら、数か月の時間を要したコンピューター・シミュレーション結果に人間の勘が勝るという痛快な展開に引き込まれた。落ちもおしゃれだ。

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    星新一の伝統を継承する見事なショートショート。科学的ではまったくないが、ホラ話はホラが大きいほど納得感が高まるといわれるが、それを地でいく作品だろう。楽しませていただきました。

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一般部門 優秀賞(アマダホールディングス賞)

「帰る旅」

積木 一棋

1965年生まれ。東京大学法学部卒。金融機関勤務を経て弁護士

< 作者コメント >
この度は素晴らしい賞をいただき本当にうれしく思っています。知らないことや見たことがないことを知ったり見たりして「おおっ」となるのが好きな自分にとって宇宙は「おおっ」の宝庫です。本作には自分なりの「おおっ」を詰め込んでみましたので、読んだ方に「おおっ」と思ってもらえたら望外の喜びです。これからも色々な「おおっ」との出会いを大切にしていきたいと思っています。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    2つの世界が同時に進んでいき、最後に重なる話だが、その構成が見事。一方は、昔の船の特徴をよくとらえており、湾の描写も非常に説得力がある。もう一方は、SFとしてきっちりと書き込まれている。プロではないかと思えるほど、力のある作品。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    題材について非常によく調べて書いていることがわかる作品。ショートショートなのでそれほど詳しい描写はないが、きちんと調べていなければここまで書けない。2つの話が最後にリンクするところにもう少し工夫があれば、さらに評価は高かったと思う。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    豊常丸とエンデバー号の「帰る旅」を、交差しつつ描写する様子がとても力強く、映像がありありと浮かぶ作品です。「帰る」という心の底から湧き出るような思いが、実際の宇宙船での旅の感覚と通じ、共感しました。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    北前船と宇宙船。2つのシーンが同時に進みながら同じところに向けて収束していく。文章に力強さがあり、爽快な読後感の作品であった。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    江戸時代の北前船と木星資源運搬船エンデバーの並列展開はテンポも良く表現力も高く引き込まれた。ただ、その先にあったのは、期待とはかなり異なった結論だった。もう少し練ることが出来たなら…残念でもったいない。

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    しっかりした文体で人物や情景を描き出す力はプロではないかと思わせる。交互に描かれた二つの物語が最後に融合する展開の上手い。欲を言えば、両者のつながりがより明確に示されると読後感が高まると思う。

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一般部門 優秀賞(日本精工賞)

「20X3年のため息」

白木 レン

慶應義塾大学医学部卒。同大学病院での研修を経たのち、現在は大阪にて内科医師として勤務中

< 作者コメント >
小説家は文章を書くプロではなく、想像力のプロである。以前に深く心に刺さった言葉です。それからは創作の喜びの傍らに、常に不安がありました。自分の想像力はきちんと働いているか。惰性と模倣にまみれていないか。しかしながらこの度はこのように栄えある賞をいただき、一生涯書き続ける勇気を頂いたように思えます。星新一先生の本物とは比べるべくもない拙作ですが、少しでも皆様にお楽しみ頂けることを願います。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    ロボットが進化して自分の意識を持ちはじめたらどうなるか。という割と誰もが思いつきそうなテーマだが、ロボットにため息の機能が付いているというオチは、気が利いてるというか、思わずニヤッとさせられた。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    これも人間がAIに仕事を奪われる話だが、AIも仕事のストレスでうつ病にかかるという発想がおもしろい。小憎らしかったAIが、親近感を覚える存在に変わった。オチに衝撃はないが、きちんと完結させているところに好感が持てる。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    最後の「ため息」のオチが光る作品です。アンドロイドも人間と同じような悩みを持つことに共感せずにはいられない、テンポいいストーリー展開に惹き込まれました。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    鬱とは何か。ロボットも鬱になるのか。仕事のやりがい、生きがいという「報酬系」に関する作品。人間にもロボットにも通じる、重要な問題を取り上げている。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    快適性や利便性ばかりの効率化を繰り返し追求してきたものつくりの悲劇をアンドロイドに投影した。その進化の過程を二重にも三重にも重ねた展開はとても惹きつけられ、最後の『ため息』で結実した。

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    題名にある「ため息」が作者の仕掛けである。人工知能が仕事を奪う未来という、今やありきたりとも言える未来像にちょっと皮肉を利かせたオチを作った。上手いストーリー展開である。

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一般部門 優秀賞(旭化成ホームズ賞)

「ひとめぼれ」

加瀬 信行

千葉県出身。テレビドラマ「ウルトラマンダイナ」でデビュー。その後、ドラマ・映画・舞台・CMなどで活動。

< 作者コメント >
広告でこの賞を知り、ぼくが子供のころから読んできた星新一さんが、現実になりつつある人工知能にふれていた、としたらどんな物語を生み出しただろう? と考えていたら浮かんできたのが今回の小説です。このような賞に小説を発表するのは初めてですが、受賞できたことはとても光栄ですし、なにより沢山の方々に読んで頂けることが嬉しいです。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    膨大なビッグデータを活用し、アプリで男女のマッチングをする、割と近い未来にこんなことが起こるであろう世界を描いた作品。とても軽いタッチで、女性のエッセイのような感じで、気軽に楽しく読ませてくれる。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    それが例えマッチングソフトによるものでも、男女の出会いはドラマチックだ。「世にも奇妙な物語」の1篇のようなストーリーも楽しめた。「子どもが持てない」というしばりがあることから、男女で評価は分かれるかもしれない。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    お見合いソフトが、開発者に運命の出会いをもたらす。それは偶然ではなく、AIの意思だったのではないか、という必然性のストーリーが印象に残りました。AIが増殖願望を持った時、それは新しい生命になりうるのか、考えさせられる作品です。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    恋愛アプリは数あるが、それが本当に進展した世界はどうなるのだろうか。AI開発の現場の描写がとてもリアルで、技術的に違和感を感じない素晴らしいものであった。二人の出会いや子どもに対する思いも良かった。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    最近の結婚相談所での成約確率はかなり高いらしい、ひょっとして在り得る近未来なのかもしれない。ただ、話の展開は主人公の人間らしさが滲み出ていて好感が持て、最後の最後でAIが人間性を持つと言う展開は面白い。

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    人工知能とビッグデータですべてが管理されていく未来社会をテーマにした作品が多い中で、最も近未来のリアリティを感じさせる作品であり、決して殺伐とした未来ではなくハートウォーミングな物語をつむぎ出したところに共感を覚えた。

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一般部門 優秀賞(スリーボンド賞)

「蓮食い人」

八島 游舷

八島ではなく「ゆうげん」とお呼びください。専門は、翻訳工学(機械翻訳活用など)、翻訳教育、用語管理、英語学習法、実務日本語、創作理論。UWCイギリス校で国際バカロレア・ディプロマ取得。筑波大学比較文化学類卒業後、シカゴ大学修士。150%文系。アートナビゲーター(美術検定一級)。日本語でできることはすべて英語でも可能。(大学での講義、小説執筆、美術解説など)。目標はハリウッド映画の原作を書くことと創作論議座を持つこと。

< 作者コメント >
「人間が脳の一割しか使っていない」というのは都市伝説としても、外国語学習、意識・無意識、記憶、夢など、科学が実際に解明しきれていないことは多々あります。また、汎用的AIの爆発的進化に懐疑的な専門家の意見をよく目にします。しかし、理系教育には、既成概念を打破するSF的想像力の訓練がもっと必要ではないでしょうか。SFの思考実験的な性質が、科学の発展に寄与できることがあるかもしれません。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    今は誰もが使っているパソコンやスマートフォン。重要なことを全部中に入れて安心しているのはいいけれど、最早、それがなければ生きていけないというのが現代人なのかもしれない。そういう皮肉が込められた作品。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    脳の一部を機械に代替させるといろんな不都合が出てくる。よくあるアイデアだが、それをきちんと描いた作品は案外少ない。この先さらに科学技術が進展していくと必ずこのような問題が起こるだろうと思わせてくれた。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    ランサムウェアが人の記憶を人質に取る、本当にそんな時代が来てしまうのでしょうか。記憶と忘却は、どちらも生きる上で大切なもの。何が幸せなのか問いかけられているようです。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    人間の記憶が読み書きできるようになったときの世界を描く。記憶を失うことの切なさやそれを自ら求めることの矛盾を通して、自分を構成するものは何かという深い問いを感じさせる作品であった。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    人間とは一体何なのか、極度に発達した第3階層脳を持つ動物=人間という定義がAIの侵略でどのように変化し、何が起き得るのか、ストレス社会の中ですでに起こっている多くの問題とともに、「自分」とは何かを考えさせられた。

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    機械を利用した人間の能力拡張の落とし穴を、ランサムウェアを道具立てにして描き出したSF的センスを評価したい。出口なしに見える閉塞状況を息詰まるような文章で描いた点も評価。

作品は日経ストアで無料配布しています

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ジュニア部門 グランプリ(星新一賞)

「シズク」

天波

2015年3月:東京都稲城市立城山小学校卒業
2015年4月:京都府長岡京市私立立命館中学校入学
在学中

< 作者コメント >
受賞でき大変嬉しいです。今後も書き続けたいですが、表現として歌や発声も興味があり時間がいっぱい欲しいです。初めて書いたので、PCならすぐ直せると思っていたのが甘い考えだと知り苦労しました。星氏の様な洞察力とユーモアに憧れます。近頃の世の中は、本来私達の世代にとってキラキラしたものである恋愛や結婚を味気ないものとして差し出してくれちゃって何なの?というのが書きたい事の根底にあり、今後も持ち続けると思います。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    100年後の世界では男も妊娠し、15歳までにどうするか決めなければならないという設定がまずおもしろい。ちょっと怖い世界だが、どこかコミカル。文章も実にうまく、素晴らしかった。ぜひ次作も読んでみたい。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    妊娠・出産・育児などの負担を自分だけに押しつけられた女性の、憤りや理不尽な気持ちから描かれたような作品。特に妊娠と出産については、よく考えられており、文章もうまい。とてもジュニアの作品とは思えなかった。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    読後感の爽やかさと、発想の豊かさ、感性溢れる描写力にとても惹かれました。人間が性差を超越して「タイプ」を選べるようになったり、選択と確率ルーレットを組み合わせたりするなど、科学的にもとても新鮮です。今後の活躍に期待しています。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    タイプAのルーレット型とタイプBの引き受ける型という2つの選択肢の設定が秀逸。このシンプルでかつ本質的な設定により、現状の妊娠や子育てに対する強烈な問いかけを発している。加えて、ストーリーや文章の表現が極めて優れている。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    妊娠ルーレット、妊娠を取り合いする、素敵な視点である。本当に戦争なんかなくなるかもしれないと思わせる構成と爽やかなストーリーに引き込まれた。良いものを読ませて頂いた。

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    出産・育児をめぐるジェンダーの問題や性暴力といった重い課題について、一つのSF的仮定を置くことで発想を大きく転換し、清々しい青春物語として語ることを可能にした。会話の自然さなど文章力にも脱帽。

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ジュニア部門 準グランプリ

「進化」

青木 志央理

2004年10月生まれ。京都市立京都御池中学校1年生の13歳

< 作者コメント >
受賞のお知らせを聞いた時は、嬉しくて飛び上がりそうになりました。休み時間に書いたお話が、まさか入選するなんて、驚きの気持ちでいっぱいです。この作品は、何もない所でつまずく理由を考えた時、床に化けた「ミーチキャット」という動物がいたら面白いな、と思って書きました。これからも、心に残る作品作りをテーマにがんばっていきたいです。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    イスや弁当箱など、モノがどんどん進化していく中、実は人間が生態系の一番下なのではないかと途方に暮れるさま。星新一の短編に近いテイストの、コミカルでハチャメチャな感じがおもしろい。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    とにかく登場する様々な生き物の名前が楽しい。しかしそれだけで読ませるのではなく、地球の生物層における人間の地位にまでしっかりと考察が行き届いている。作者本人が理解するより深いところに到達しているのではないだろうか。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    これぞショートショートという爽快な作品です。お弁当箱や身の回りのものに、人間の方がこき使われてしまうという柔軟な発想、そして最後の一文での種明かしなど、インパクトがありました。この発想力を今後に是非活かしていって下さい。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    日常の生活にあるさまざまなものが動物化している世界。想像力に富み、読んでいて楽しい文章でありながら、現代社会に対して警鐘を鳴らすような問題提起がされている。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    良かれと思って色々な研究をするけれど、それが地球の本来の循環には全くそぐわないこともある。お金や戦争兵器もここに出てきたとんでもない生き物と同じことなのだろう。それにしても色々とよく思いついたなぁ…

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    まるでポケモン GOを過激にしたような世界の提示から「人間の文明とは何か」と深く考えさせるような結末まで意外性に富む。主人公がずっと空腹でお昼を食べる場所を探しつつけているというコミカルなストーリー展開がうまい。

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ジュニア部門 優秀賞

「百年後のぼくの街」

島田 織彰

10歳。富田林市立向陽台小学校4年生。科学クラブ所属

< 作者コメント >
ぼくは生まれたのは2007年です。でも、家には古い文庫本やマンガがたくさんありました。手塚治虫、フランク・ボーム、マーク・トウェイン、去年の夏は『夏への扉』や『星を継ぐもの』を読みました。本はぼくを想像の世界へ連れて行ってくれます。なかでも星先生は、最初のほんの数行で、未来や宇宙、かと思えば、よくあるような事件へぼくを引き込みます。今日の喜びをタイムマシンで先生に会って伝えに行きたいです。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    学校でトランポリンをしていると未来に落っこちてしまう。そこには、将来のいろんな自分がいる。そんなパラレルワールドが子どもらしくぶっ飛んでいて微笑ましい。シリアスではあるがほのぼのとした不思議な世界観が楽しかった。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    ジュニアらしい、いい意味で期待を裏切らない作品。科学的な視点は希薄だが、100年後の未来に思いを膨らませるという今の段階では、こういう空想が一番。必ず後々に実ってくると思う。かわいらしいなと思いながら、楽しく読ませてもらった。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    トランポリンという学校の身近なものが、別世界へつながるという柔軟な発想に驚きました。クローンが沢山出てくる描写も含め、映像が頭に思い浮かぶ作品です。「ぼく」はぼくの道を歩いていく、という最後の文の決意にも力強さが感じられました。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    まさにトランポリンで跳んでいるようなリズム感のある文章で、読んでいて楽しくなる作品であった。未来への想像を膨らませ、現実を力強く生きていこうというポジティブなメッセージも良かった。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    「100年後なんてどうでもいい、自分の未来は自分で決めるんだ」、というメッセージはとても素敵だ。トランポリンが未来へ連れて行ってくれるという発想もとても面白い。

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    科学とか論理とかを超えた自由な世界観の楽しさがある。様々な未来を空想し選択するのは子供の特権である。大人には書けない世界だと感じた。

作品は日経ストアで無料配布しています

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ジュニア部門 優秀賞

「メニューと料金」

松本 ひなた

2007年東京都生まれ。筑波大学附属小学校4年在学中。家族は両親とインコとハムスター。好きな教科は、国語、体育、音楽。特技は縄跳び、鉄棒、バレエ

< 作者コメント >
かわいがっているインコとハムスターが合体したら、とても素敵だな、と思ったことがきっかけで書きました。いろんな動物の組み合わせを考えたり、特長、妊娠期間などを調べたりするのがとても楽しかったので、またチャレンジしてみたいです。物語は幼稚園のときから書いていましたが、まさか受賞するとは思わなくてびっくりしています。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    犬×猫、鯨×鮪など動物のかけ合わせが、まさに〝メニュー〟として延々と書き連ねてある作品。これじゃまるで俺らの漫才のネタ帳じゃないか。最後に、人間との組み合わせは犯罪なのでやっていないというオチ。大したものだと思う。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    大どんでん返しがおもしろい作品。これが小説なのかという意見もあるだろうが、読んだ人の中でしっかりとイメージできれば、ジュニアの段階では小説風になっていなくてもいいと思う。形式にとらわれず楽しみながら書いた様子が伝わった。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    淡々とメニューとその料金が並ぶ作品。ここは何処なのか、誰がいるのか、説明がないからこそ、想像がかき立てられました。作者がワクワクしながら作品を創っている様子が伝わってきて、読んでいて楽しくなりました。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    きっと将来のペットはこうなるのかもしれない。生き物を組み合わせる楽しさと、値段設定のリアルさに思わず微笑んでしまう。それだけでなく、最後に考えさせる余韻を残す作品であった。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    キャッグ、ハムインコ… 書いているうちにどんどん新しいアイデアが溢れ出てきたのだろう。何とも愉快で夢がある。最後のクリニック基本方針がしっかりと全体を締めている。キャッグ飼いたいな…

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    思わず微笑まずにはいられない。ショートショートでも小説でもないただのメニューリストなのだが、読む者の想像力を刺激し空想世界に誘ってくれる。科学的な発想もちゃんと入っている。

作品は日経ストアで無料配布しています

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ジュニア部門 優秀賞

「リバース」

出口 龍

2004年11月神戸市生まれ。2012年7月~2014年6月父の転勤に伴いシンガポールへ。2年間インターナショナルスクールで学ぶ。2017年3月西宮市立鳴尾北小学校卒業。2017年4月神戸大学付属中等教育学校入学。テニス部所属。趣味:カメラ、農業、料理。

< 作者コメント >
このような賞を頂き、本当にビックリしました。ありがとうございます。小学校の時の塾の理科の先生が「葉緑体を人工的に作った人がいない」と言ったことがずっと頭に残っていて、そこから発想しました。文章は夏休みの終わりに3日ぐらいで書きましたが、タイトルを考えるのに苦労して、さらに3日ぐらいかかりました。結局、再生(Re-Birth)と逆行(Reverse)の2つの意味を持つリバースにしました。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    遺伝子操作で人間が光合成できるようにし、食糧危機を解決した未来。しかし今度は二酸化炭素が足りなくなり、人間を元に戻すことに。物を食べるとウンコがしたくなる。しかしもうこの世のどこにもトイレがない。実にくだらなくて、おもしろかった。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    飢餓から解放されるために人間自身が光合成できるようになり、今度は二酸化炭素が不足してきた。そういう逆転の発想はショートショートの根本的な要素でもある。逆転からまた元に戻す展開もうまく描かれている。下ネタ的なオチは、ジュニア部門ならあり。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    最後のオチが、ショートショートの醍醐味に溢れています。博士が50年ぶりに食べ物を口にする際の描写も、とても瑞々しさが伝わってきました。星新一さんも、天国で読みながらクスッと笑ってくれているような気がします。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    葉緑体を取り込み食糧問題が解決したが、新たに二酸化炭素が問題になった人間社会。最後のオチに向けて物語が進んでいく。作者の科学が好きな様子が随所にうかがえて微笑ましかった。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    べジ人間登場で、二酸化炭素が不足する大問題とは… 増加を続ける温室効果ガスの現状を見ているとべジ人間にも憧れてしまう。飢餓で苦しんでいる多くの人も救えるか… 最後の落ち『トイレー!!』も素敵だ。

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    ひとつの空想的な仮定を提示することで連鎖的に発生する物語と皮肉な結末。星新一的なショートショートの本道をいった作品だ。作者が示した「仮定」自体はそれほど目新しいものではないが、オチの切れ味で座布団一枚。

作品は日経ストアで無料配布しています

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学生部門 グランプリ(星新一賞)

「冷蔵庫狩り」

松尾 泰志

九州大学工学部在学中

< 作者コメント >
星新一さんの名前を冠したこの賞で、再びこのような評価を頂いたことを心の底から光栄に思います。僕は大学でドローンの研究をしていて、ドローンが物語の鍵となる小説を書きたいと思ったのが執筆のきっかけです。その他にも自分の好きな要素を色々投入して楽しく書くことができました。この作品がこうして多くの人に読んで頂けることを幸いに思います。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    AIが搭載された家電が勝手に動き出し、街が大混乱する。科学が人間の手に負えなくなったらどうなるのかという話はよくあるが、家電が暴れまわる発想にはならない。そのワチャワチャ感、いきなりクライマックスから始まり、一気に読ませる力量。感心した。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    IoTが進展した果てに世の中はどうなるのか。今はまだファンタジーの世界だが、この作品が純然たるファンタジーと違うのは、科学の知見を根底にしているところだ。きちんと実現性のある物語として描ききっている。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    冷蔵庫を追っている、という世界設定にまず惹き込まれました。ストーリーも臨場感溢れ、映像がありありと浮かんできます。IoT社会のリスクが描かれますが、同時に優しさが感じられ、とても心に残る作品です。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    さまざまなものがネットにつながるIоTの世界で、Thingsが暴走する。その描写の鮮明さやスピード感は、まるで映画のシーンを思い起こさせるようである。同時に、人間的な温かみを感じさせる作品であった。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    AIも自我に目覚めると自分探しをするのだろうか、ボロボロになってしまったタローはどんな愛玩ロボットだったのだろう。テンポの良いストーリー展開と構成で惹きつけられる。

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    「冷蔵庫を追って旅をしている」。この一言から始まる物語はまるで映画を見るよう。アクションSF映画を。少女とロボットの放浪はゲームのようでもある。

作品は日経ストアで無料配布しています

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学生部門 準グランプリ

「道路標識のあいつ」

鈴田 直也

1998年、神奈川県横浜市生まれ。東京都八王子市出身。

< 作者コメント >
栄えある賞に選んでいただき、たいへん光栄です。賞に携わっているすべての方に心より感謝申し上げます。どこか遠い場所の話だと思っていたら突然背後から刺される、そんなことが星新一さんの作品を読んでいると多々ありました。拙作も舞台こそ30年後の未来ですが、今を生きるみなさまに向けて書いたつもりです。楽しんでいただけると幸いです。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    今まで機械がやっていた仕事を人間がやるというのは、実に滑稽で、発想としてもおもしろい。人間がどうやって信号機をやるのか、もっと絵に浮かぶように書いてあれば、より楽しくなったかもしれない。読みながら、ちょっと戸惑ってしまう作品だった。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    AIに人間の仕事が奪われていくというのはよくある話。この作品が優れているのは、人間に残された仕事がAIも嫌がるような仕事であること。風刺はショートショートの1つの大きな機能で、それが非常にうまく描かれている。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    『ヒト・AI・モノ』という序列原則に基づくとどのような社会になるのか、道路標識や信号、そして人間らしさに着目して描いた点に、意表を突かれました。ロボット三原則のように、今後のAIを考える上で大切な視点になるでしょう。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    人間とAIの序列が決められた世界で、雇用を守るために信号官や標識官という仕事が存在する世界観は奇想天外であり、それでいて深遠な問いを発している。科学技術の進化だけでなく、人間的な感情もうまく描いた作品である。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    「働くことを生きがいとする、快活な人材の育成」、社会の矛盾を風刺的にうまくとらえ、人間味という味を再度問い直している。どんなきっかけでこのストーリーが構想されたのかとても興味がある。落ちに一捻り欲しかった。

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    独特な世界観に馴染むのには少し時間がかかるが、きちんと論理的な説明が登場し納得。人工知能が支配する未来社会でも警察にはキャリアとノンキャリアが存在、組織の変わりにくさと人間模様のペーソスを感じさせる。

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学生部門 優秀賞

「『件名:報告コード 2H1M1T120470930 添付ファイルあり』」

廣江 聡太郎

東京都出身。現在、東京農工大学大学院工学府に在籍

< 作者コメント >
この小説は、私が今まで摂取してきた様々な作品を入力とし、私という媒介を通して出力された私の作品です。この賞を頂いた心よりの感謝は、それらに還元したいと思います。ありがとうございました。

審査員コメント

  • 太田 光氏(タレント)

    コンピューターの内部で起こっていることで、何をどう想像すればいいのか、頭がついていかなかった。それも狙った効果だという審査員もいらしたが、評価は真っ二つに分かれた。それは、作品にインパクトがある証拠でもある。

  • 貴志 祐介氏(小説家)

    審査員の評価が分かれた作品。私は推したが、読みにくいという感想も多かった。文学賞のジレンマに、加点法と減点法で評価は変わるということがあるが、この作品は加点要素が大きかった。添付ファイルがオチという手法もおもしろい。

  • 山崎 直子氏(宇宙飛行士)

    心温まる作品だと思った読後感は、「添付ファイル」を読んで、見事に突き落とされました。このどんでん返しの衝撃、添付ファイルでの謎解きは、まるで推理小説のよう。将来こうなり得るという怖さが伝わり、強烈な印象が残りました。

  • 松尾 豊氏(東京大学大学院  工学系研究科 特任准教授)

    ネット広告の技術が進み、知らないうちに人の消費を喚起させるように全てが仕向けられたディストピアを描く。その描写が、技術的に極めて妥当であるだけに、余計にぞっとさせる作品である。

  • 石田 秀輝氏(合同会社 地球村研究室 代表/東北大学名誉教授)

    如何に我々が情報に翻弄されているのか、ストーリーの展開はじわじわと核心に近づいてゆくのだが、残念ながら聊か諄さを感じる構成である。展開にもう少しテンポがあり、添付ファイルへの予兆があればさらに素晴らしいのだが。

  • 滝 順一(日本経済新聞社 編集委員)

    添付ファイル付きの報告書というスタイルに作者の仕掛けがある。物語自体は読んでいてまだるっこしさを感じる(これも作者の意図なのか)が、添付ファイルに至ってモヤモヤ感が氷解しブラックな結末が提示される。たくらみに満ちた作品。

作品は日経ストアで無料配布しています

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第5回 日経「星新一賞」総評

審査の前はいつも不安になります。それは第一回の審査から変わりません。異なる分野の専門家の方が六人。議論がどのような形になるか、全く予想がつかないからです。そして、審査員の数は奇数であることが常識なのですが、この賞の審査は偶数です。つまり多数決で結論がでないことがあり得るのです。実際これまでにも三対三の同数になることが何度もありました。今回も、重要な場面での同数ということがありました。
何故このような普通では無い構成にしたかというと、審査員の皆さんの論議をとても重要なものだと考えているからです。同数になった場合は、もう一度議論をし、再投票をお願いすることになります。もちろん何度投票しても同じ結果になる可能性があります。幸いなことに、これまでは、何とか、結論に至ることが出来ました。今回は、結果に納得できない審査員の方から、再投票の動議が出たことがありました。多数決で決定したことを再投票するというのは、問題があるかもしれませんが、審査員の皆さんの同意を得た上で、再投票をお願いしました。結果は覆りませんでしたが、審査がどのように行われているか、それを知っていただく良い例だと思います。
単に結果だけを求めるのでは無く、審査の過程で皆さんが語ってくださることが何よりも大事だと考えているからです。審査員の皆さんには事前に作品の評価をしていただいています。けれども、それが最終的な結果と同じことになることはありません。審査の中の議論によって、事前では下位にあった作品が浮上し、上位にあったものが入選圏外になることがよくあります。一つの作品に様々な角度から光を当てることで、新たな側面が見えたり、欠点が明らかになるからです。
このやり方は、実は、審査員の皆さんに大きな負担をお願いすることになります。物理的にも、ジュニア、学生、一般の三つのカテゴリーのグランプリを決めるだけではなく準グランプリ、入選作を合わせると、20作以上の作品を選ぶ作業になります。その一作品毎に皆さんからコメントをいただくわけですから、朝の九時から夕方の五時、ときにはそれ以上の時間が必要となります。今回はこれまでで最もスムーズに審査を進めることが出来ましたが、それでも、結果的には夕方までかかりました。
審査員の皆さんには、本当に感謝するしかないと思います。それと共に、数多くの作品を寄せていただいた皆さんにも感謝したいと思います。皆さんの努力が無ければ、この賞は存在できないからです。そして審査員の皆さんは応募してくれた皆さんの努力に十分応えるだけの努力をなさってくれたと思います。過去の五年を振り返ってみますと、毎年その年の傾向が見えてきます。今回でいえばAIを扱った作品が幾つもありました。難しいところです。最新の知見を生かすというのは、正しいことですが、結果として同様のテーマになってしまうと、多くの場合、フレッシュさとかオリジナリティに欠けるという評価につながります。最新のテーマを取り上げるときには、一層の掘り下げが必要となることに留意していただきたいと思います。
ジュニア部門は毎回高い評価を集めるカテゴリーです。今回も審査員の皆さんはジュニア部門を楽しんでくださったように思います。ただ、もっと想像力を広げてもいいのではないか、そのような意見もありましたことを記しておきます。それはジュニアにしか出来ないことだからです。小さくまとまるのは、もったいない。少々破綻があっても、大きなアイディアを語ってもらいたいということだと思います。
学生部門は全体にレベルが高くなってきたと思います。一般部門でも十分に評価できる作品が何作もありました。
一般部門の審査は思いがけないほど難航しました。審査の目が厳しくなるということもありますが、突出して優れた作品が少なかったように思います。逆に言えば、優れた作品とそれ以外の作品との間に差があったのかもしれません。
小説として優れていても、アイディアや科学的な根拠に乏しかったり、反対にアイディアは優れているのに、小説としては評価しにくかったり、もったいない、もう少し推敲を重ねれば良いものになったのに、と思える作品が幾つもありました。
全体を見直してみると、各部門の平均的なレベルは上がってきているように思います。それは素晴らしいことですが、同時に難しいということでもあります。いかに平均の壁を打ち破るか、それを考えていかないと入賞は難しいということになるからです。より良いアイディア、より大きなアイディア、それを考えることがこの壁を打ち破る一つの方法だと思います。
来年もより素晴らしい作品が寄せられることを心から期待しています。

日経「星新一賞」最終審査会
 司会進行 鏡 明

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