受賞作品詳細

星新一賞

一般部門 グランプリ(星新一賞)

「次の満月の夜には」

相川 啓太

理学博士。民間企業に勤務。2014年「ピロウ」で第1回日経「星新一賞」準グランプリ(IHI賞)を受賞。

< 作者コメント >
昨年に引き続きこのような評価を頂き大変光栄です。今年は「科学の楽しさとはなんだろう?」と私なりに考えた結果、「量論的に導き出すことのできる意外な結末」というものが一つの大きな魅力なのではないかという結論に至り、私の考えるサイエンスの楽しさを詰め込んだ理系文学を投稿させていただきました。皆様に楽しんでいただければ幸いです。

審査員コメント

  • 谷 甲州

    非常にスケールの大きな作品。小松左京さんの『復活の日』を思い出させる。その一方で、どうしても説明が多くなる弱点が生じる。アイディアをストーリーに折り込んでさりげなく舞台背景をわからせる工夫が必要。

  • 石黒 浩

    地球の環境問題に関する問題を非常に緻密な考察の基に物語にしており、単なるSF小説ではなく、科学者にも環境問題に関する重要な疑問を提示する作品である。

  • 古川 聡

    グランプリ受賞おめでとうございます。二酸化炭素を炭酸カルシウムとしてサンゴに固定、それを大量に行うための変異体作成というアイデアを更に膨らませ、理系的に系統立てて見事に描いています。科学技術をどのように使うかは我々自身にかかっているというメッセージを受け取りました。

  • 冨田 勝

    地球規模の大きなスケールのストーリーは、科学者が読んでもかなりリアリティがあり、真剣に環境科学者や分子生物学者を交えて学術的に議論したくなる内容です。小説としての完成度も非常に高く、まさにグランプリに相応しい作品です。

  • 水本 伸子

    地球を救うはずのサンゴが、科学者の暴走で世界の破たんになってしまうのを、整然としたストーリーにまとめ上げていて素晴らしいと思います。

  • 滝 順一

    しっかりした科学的事実に基づき構成され安定感のある作品です。地球温暖化という現代的なテーマを扱い、科学の暴走の可能性を取り上げたのは秀逸だと思いました。こうしたことがありうるのか、科学論争にもなりそうです。

作品は日経ストアで無料配布しています

※ 利用開始登録(無料)が必要です。

一般部門 準グランプリ(IHI賞)

「墓石」

岩田 レスキオ

1955年横浜市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。元神奈川県職員。現在無職。

< 作者コメント >
星新一さんの作品を読みあさっていたのは、もう50年近くも前になるだろうか。SFは一旦大学受験の時に封印した筈だったが、還暦を迎える歳になっても、何か書くとSFっぽくなるし、読む方もやはりSFに戻ってしまう。星さんがそうであったように、ほんのちょっとした異質な条件から突飛な飛躍を生むのがSFの醍醐味である。これからも、そうした飛躍を大切にしていきたいと思っている。

審査員コメント

  • 谷 甲州

    目をむくほどの新しいアイディアや、驚天動地の舞台などは設定されていないが、意表をつく展開で読まされてしまった。読後感もしみじみとして余韻が残る。星新一さんの作品を思い出した。

  • 石黒 浩

    本当の幸せはどこにあるのか、ロボットの命の永遠性は人間とどこで深く関わるのだろうか。人間とロボットのほのぼのとしているようで、少し怖いような、不思議ながらも可能性のある未来を描いている。

  • 古川 聡

    準グランプリ受賞おめでとうございます。墓石がヒューマノイド・チューリングマシンという新鮮なアイデアを膨らませ、何が起こるかが理系的に丁寧に描かれており、興味深く読ませていただきました。

  • 冨田 勝

    墓石が「生きている」という奇想天外な発想が面白い。墓石が自我を持ってあれこれ考えている様がユーモアにあふれ、また社会的にもいろいろ考えさせられることを示唆してくれる。読んでとても楽しくて奥深い作品です。

  • 水本 伸子

    墓石の周りで生活するという奇想天外さと、人の心が帰っていくところとしての墓の永遠さを面白く語っています。地味だけれどほのぼのとしていて癒されます。

  • 滝 順一

    亡くなった人の知識や人格を人工知能上によみがえらせる研究は現実に進んでいると聞きます。生きている家族と死んでしまった家族が繰り広げる相変わらずの家族模様。悲しくもおかしな風景をもう少し生き生きと描写していただければなおよかったと思います。

作品は日経ストアで無料配布しています

※ 利用開始登録(無料)が必要です。

一般部門 優秀賞(JBCCホールディングス賞)

「ママ」

本間 かおり

東大法学部卒、同大学院了、シカゴ大大学院了、三菱電機理事、千葉大学教授、日本大学教授、公正取引委員会委員などを経て、技術と競争ワークショップ代表。

< 作者コメント >
1968年公開の映画「2001年宇宙の旅」は2001年に人類が木星系に到達するというプロットでした。翌年人類の月面初到達は映画の現実性を裏付けました。このころがスペースSFの全盛期でした。しかし、実際には、当の2001年にはニューヨークの同時多発テロ、さらに10年後の東電原発事故と、そのまま人間が内向きになっていって、SFもスペースものが不人気です。私は逆行だといわれるのを覚悟で恒星に飛びました。

審査員コメント

  • 谷 甲州

    宇宙を旅する少女の物語。ありがちなシチュエーションとはいえ、やはり期待せざるをえない。少しくらい妙な展開があっても、許せてしまうのだ。やがて少女は成長し、「ママ」となる。異質な世界の壮大な成長物語。

  • 石黒 浩

    宇宙探査をする人工知能は何を考えながら旅をしてるのか。人工知能の心に触れながら一緒に宇宙を旅している感覚になる。

  • 古川 聡

    優秀賞受賞おめでとうございます。15歳の少女「わたし」を指揮者とした宇宙機というアイデアを元に、常に危険と隣り合わせな宇宙飛行を生き生きと描いています。

  • 冨田 勝

    15歳の少女が宇宙探査の指揮官に任命される、というファンタジックな設定でありながら、科学の言葉や数字に堅く裏付けられている、異色の作品。幅広い読者層に支持されるであろう、とても楽しい作品です。

  • 水本 伸子

    少女をロボットに写し、少女の大胆さでコンピュータが困難に立ち向かっていく、人間の価値、少女の大胆さや柔軟性をうまく表現していて楽しめます。

  • 滝 順一

    伝統的なSFの語り口がいい。結末が見えてしまうところもありますが、SF好きが喜ぶ道具立てで読ませる作品だと思います。科学的な考証もしっかりしているようです。

作品は日経ストアで無料配布しています

※ 利用開始登録(無料)が必要です。

一般部門 優秀賞(東京エレクトロン賞)

「世界が2019年を勝ち取るためのアイデアを募集します」

馬場 万番

2006年慶應義塾大学卒業。その後9年間、ソフトウェアの開発・調査・メンテナンスに携わる。2015年インターネット関連の事業で開業。

< 作者コメント >
この度は栄えある賞を頂き大変光栄です。星新一先生の作品は小学生の頃より読み始め、現実感ある未来の描写、皮肉の効いたユーモアにすっかり心酔してしまいました。いわゆる理系の道に進んだのも、星先生のショートショートの影響があったのかもしれません。本作品が一人でも多くの方に読まれ、作品内で触れた「2019年を勝ち取るためのアイデア」が活発に議論されることが私の切なる願いです。本賞を機に、沢山の方の目に留まれば幸甚です。

審査員コメント

  • 谷 甲州

    壮大で馬鹿馬鹿しいホラ話。時系列を根本からくつがえしかねない大実験の動機が、いかにもみみっちい夢だったりする。そのギャップが楽しい一編。

  • 石黒 浩

    タイムマシンがあれば、必ずどんな願いも叶う。タイムマシンがあれば、世界は自由になる。そうした人類の夢を描いたSFらしいSF作品。

  • 古川 聡

    優秀賞受賞おめでとうございます。状況を打破するためのアイデアを募るため、SF雑誌に投稿という物語設定が面白いです。

  • 冨田 勝

    未来や過去に移動する、といういわゆる普通のタイムマシンではなく、失敗したら元に戻れるタイムマシンを考案。ミッションが成功するまで何度でもやり直せるので、必ず成功するというしくみであるが、不可能なミッションを設定したら無限ループに。思わず笑ってしまうユーモアに富んだ作品です。

  • 水本 伸子

    こんなくだらないことのために無限ループに陥ってしまった問題、SF誌に投稿して解決のアイデアを求めるという発想がとても面白い作品でした。

  • 滝 順一

    アイデアの卓抜さでは優れたものがあると感じました。アイドルとの結婚という世俗的な目的のためにタイムマシンという大がかりな設定をする馬鹿馬鹿しさと、その帰結としての無限ループの落し穴の落差に小説的な面白さがあると思います。

作品は日経ストアで無料配布しています

※ 利用開始登録(無料)が必要です。

一般部門 優秀賞(アマダ賞)

「神の双曲線」

遠無 計太

早稲田大学を中退。京都大学を卒業。その後サラリーマンとなり現在に至る。青少年時代にゲーデルの不完全性定理、ハイゼンベルグの不確定性原理、ドーキンスの「利己的な遺伝子」、ソシュールの「一般言語学講義」、ロンドンの「海の狼」などに影響を受けた。妻と娘との3人暮らし。

< 作者コメント >
大学進学を前に「理系」にするか「文系」にするか大いに迷った挙げ句、「両方やればいいんだ」という大それた結論を出して息巻いていたことを懐かしく思い出します。「理系文学」という魔法の言葉に惹きつけられて、この物語を書きました。星新一さんのショートショートをむさぼるように読んだひとりとして、受賞をたいへん光栄に思います。審査員の方々、事務局のみなさま、本当にありがとうございました。

審査員コメント

  • 谷 甲州

    人は死ぬとどうなるのか。この永遠のテーマに正面から挑んだ力作。一読しただけでは理解しづらい点もあるが、異様なイメージをみせてくれる。

  • 石黒 浩

    死ぬ直前には時間は無限に長くなり、その永遠の時間の中で人は何を考えるのだろうか?時間と死の関係を深く考えさせられる作品である。

  • 古川 聡

    優秀賞受賞おめでとうございます。大変興味深い発想力に驚かされました。

  • 冨田 勝

    死が近づくと実時間に比べて体感時間がどんどん長くなるので、永遠に死なない、という仮説を検証するために人体実験を計画。その度肝を抜く実験結果は、鳥肌ものでした。難解なストーリーですが、理解するとスケールに大きさに圧倒されました。

  • 水本 伸子

    少しとっつきにくい作品ですが、読み込むと奥が深いことがわかりました。こんな困難さと長い時間をかけて実験をするその執念をもっと表現してほしい気がしました。

  • 滝 順一

    人間は死ぬ間際に一生を回想すると言われます。死の瞬間に人間の意識は何を経験するか、深く考えさせられるところのある作品です。ただもう少し分かりやすくテーマを提示されないと理解されにくいと思います。

作品は日経ストアで無料配布しています

※ 利用開始登録(無料)が必要です。

ジュニア部門 グランプリ(星新一賞)

「回路」

利根 悠司

< 作者コメント >
星新一氏は、僕の最も尊敬する人物の一人です。彼の紡ぎ出す奇抜なストーリーは、読む人の心を魅了し、途中で本を閉じることを許しません。そのような偉大なる人物の賞において、僕の作品が評価を頂くことができ、非常に光栄に思います。このような素晴らしいイベントを開催してくださった関係者の皆様に、心よりお礼を申し上げます。

審査員コメント

  • 谷 甲州

    くり返しとエスカレートが楽しい作品。でも、もう少しエスカレートしてほしかった。ないものねだりかもしれないが、破綻する寸前まで振れ幅を大きくして最後にストンと落とす心地よさがほしい。いまのままでも、きれいに着地しているのだが。

  • 石黒 浩

    感情をコントロールできる薬が発明されたらどうなるか。科学が人間に幸せをもたらすかどうか、深く考えさせられる人間の本質に迫った作品である。

  • 古川 聡

    グランプリ受賞おめでとうございます。科学技術をどのように使うかは我々自身にかかっているというメッセージが込められており、物語に引き込まれるとともに考えさせられました。

  • 冨田 勝

    ヒトの幸福感を制御するために人工ウイルスを感染させて脳内代謝を改変することは、理論的に不可能とは言い切れず、それなりのリアリティがあります。人類の「幸福」をとことん追求するとこうなっちゃうかも、という警鐘を鳴らした、実に奥深い作品です。

  • 水本 伸子

    人間の心をつかさどる脳がプログラムできる回路なのはちょっと寂しい気がします。戦争はなくなるけれど、何が幸せなのかわからなくなるのが幸せなのかという未来への問題提起だと思います。

  • 滝 順一

    幸福とは何か。負の感情を持たないことが幸福なのか。技術に手助けされて実現するのは真の幸福なのか。深いことを考えさせる作品だ。ウイルスによって脳の回路を変える設定も近年の遺伝子技術の進歩を考えるとリアリティがある。

作品は日経ストアで無料配布しています

※ 利用開始登録(無料)が必要です。

ジュニア部門 準グランプリ

「ノアの箱舟」

遠藤 哲

平成13年12月5日生まれ。平成20年まこと幼稚園(中野区)卒園。平成26年新宿区立西戸山小学校、香港日本人小学校を経て、世田谷区立池尻小学校卒業。現在、世田谷区立三宿中学校第1学年在籍。第1回星新一賞に、初めて真剣に執筆したSF短編小説でチャレンジ。しかし面白くなかったため落選。今もなお、ネタ探しに励んでいる。

< 作者コメント >
入選作品に選んでいただき、本当にありがとうございます。入選の連絡があったときは、文字どおり飛び上がって喜びました。今回は、小学校の時に思い付いたアイデアを作品にしました。自分の中には、(1)巨大なもの、(2)人類を凌駕した知的な存在、(3)人類の希望とも恐怖ともなりうるもの、をかっこいい!と思う感覚があります。この作品では、この感覚を描いたつもりです。

審査員コメント

  • 谷 甲州

    スケールの大きな作品。未来の手ざわりが感じられる。その反面、文章が説明気味になって、読みづらい印象を受けた。物語世界の広がりが感じられてよかったです。

  • 石黒 浩

    宇宙はドラマに満ちている。地球の滅亡もその救済も。この作品は宇宙の可能性を感じさせるスケールの大きな作品である。

  • 古川 聡

    準グランプリ受賞おめでとうございます。ノアの箱舟のアイデアを見事に膨らませ、JAXA、NASAを含む宇宙開発現場が生き生きと描かれています。作者の方がもし宇宙開発に興味があるなら、将来一緒にお仕事をできるのを楽しみにしています。

  • 冨田 勝

    この宇宙には人類以外にも、滅び行く自分の惑星を後にして新天地を必死に探索している知的生命体が沢山いることを描写しています。空間的スケールも時間的スケールもとても大きな作品です。

  • 水本 伸子

    未来に本当に起きるかもしれない話。宇宙の現場が理系的によく書かれています。未来のノアの箱舟に頼るしかない人類の未来が見えるようです。夢はないのでしょうか。

  • 滝 順一

    科学好き、宇宙好きの心が伝わってくる作品だ。宇宙のノアの箱船というアイデアは決して斬新とは言えないものの、人類は救われるという結末にほっとさせられます。M-1などアルファベットの言葉の多用は少し控え目にした方が読みやすいと思います。

作品は日経ストアで無料配布しています

※ 利用開始登録(無料)が必要です。

ジュニア部門 優秀賞

「白くなっちゃった」

稲葉 志門

青山学院初等部在学中。

< 作者コメント >
ぼくは、この話を書く時に身近な事を題材にしようと思いました。そして、ぼくが時々牛乳を残して母にしかられる事を思い出し、これをもとに何か面白い話を作ろうと思いました。その時ちょうど、夏休みの自由研究でゴミと海について調べていたので、家から流れ出た物が海に到達するという事をくわしく知り、この牛乳の話と結びつけることにしました。ずっとわくわくしながら書いたので、受賞できてとてもうれしいです。ありがとうございます。

審査員コメント

  • 水本 伸子

    自分が嫌いだからと水道に流してしまった牛乳が、どうなってしまうのか。気が付いたら、大変なことになっていたけれど、夢でよかったですね。環境問題は、こんな気づきが大切だと思います。

  • 滝 順一

    下水に流したモノはどこへ行くのだろう。自分が生みだしたゴミで世界を汚してはいないか。そんな疑問や心配、心の痛みを不思議なストーリーに仕上げた感じ。とても読みやすく、最後のオチも効いています。

作品は日経ストアで無料配布しています

※ 利用開始登録(無料)が必要です。

ジュニア部門 優秀賞

「アルモノ」

黒沼 花

世田谷区立八幡小学校5年、在学。

< 作者コメント >
入選を聞いた時は嬉しくて飛び上がりそうになりました。星新一賞のチラシを見て、百年後の未来を想像して書くのは面白そうだと思いました。夏休みの自由研究としてプロット作りや人物設定などもやり、楽しみながらがんばって書きました。途中、書くのが辛くなることも少しあったけれど、できあがった時には大満足でした。この自分でも気に入っている作品が受賞できて、本当に幸せです。

審査員コメント

  • 古川 聡

    優秀賞受賞おめでとうございます。とても良く描かれており、グイグイ引き込まれました。物語を通して「モノを大切に」というメッセージが光ります。

  • 滝 順一

    モノがあふれている社会への警鐘をファンタジックに描いた作品ですね。話の展開が読めず勢いのあるストーリーに感心しました。100年後の2114年のわずか数日~数ヵ月のお話であることに驚きです。

作品は日経ストアで無料配布しています

※ 利用開始登録(無料)が必要です。

ジュニア部門 優秀賞

「未来の貘」

実瀬 純
(本名 : 佐々木 智大)

1999年11月 岩手県宮古市生まれ(2人兄弟の二男)。2006年4月 宮古市立磯鶏小学校入学。2007年 「透明人間」で読書の楽しみを知る。ジュール・ベルヌに傾倒。以後、「少年探偵団」シリーズ、「怪盗ルパン」シリーズ「ハリーポッター」シリーズ等、探偵小説からファンタジー、SFなど次々に読み漁る。2011年 兄の書棚で「星新一」と邂逅。文庫、全集を買い集める程夢中に。同時期、週1作のペースで自作ショートショートを書いては、両親や先生、同級生に披露。2012年4月 宮古市立河南中学校入学。軟式テニス部所属。夏目漱石、ドストエフスキーなど古典の面白さに目覚める。2013年第1回星新一賞応募。2014年第2回星新一賞応募。

< 作者コメント >
小学生の頃から全ての作品を読破するほど星新一さんが好きだったので、「星新一賞」があると知ってすぐに応募を決意しました。それ程この賞は深い思い入れのあるものです。今回このような結果を残すことができ、大変光栄に思います。この作品を書く中で、未来を「創造」する第一歩は、私達の世代が「想像」していくことだと気づきました。これからも、夢のある作品を作っていきたいです。

審査員コメント

  • 石黒 浩

    人の見る夢は制御できる。脳科学がもたらす未来を、しっかりとした理系的思考と深い洞察力で描き出した優れたSF作品である。

  • 冨田 勝

    夢を喰う動物「獏」をテーマにしていますが、夢を自在に記録したり操作したりすることは、理論的に不可能とは言い切れず、それなりにリアリティがあり、100年後には現実なものになっているかもしれません。文字通り夢のように興味深い作品です。

作品は日経ストアで無料配布しています

※ 利用開始登録(無料)が必要です。

ジュニア部門 優秀賞

「子供が欲しいプレゼントが映る鏡」

田上 大喜

1999年アメリカのシカゴで生まれる。その後、親の転勤に伴いオーストラリアのFarmhouse Montessori Preschool 、Forestville Montessori Schoolを経て、シンガポールのISS International Schoolに編入、Saint Joseph’s Institution International School に入学。2014年2月より立命館宇治中学校に編入。

< 作者コメント >
賞をいただけたと分かった時には、本当に嬉しかったです。作品の中のT博士はとても頭が良く、いつも人を助けるための道具を発明している心優しい科学者です。こんな科学者になりたいなという僕の将来の夢を描いたものなので、とても楽しく書くことができました。星新一さんの名前がついた素敵な賞を、本当にありがとうございました。僕は星新一さんの本を29冊持っているので、賞状を本と一緒に大切に飾ろうと思います。

審査員コメント

  • 谷 甲州

    明かるくて安心して読める作品。オチも予想を大きく越えるものではないが、ほのぼのとした気持になれる。ある意味で、もっとも星新一さんの流れをくむ作風だと思う。これからも書きつづけて下さい。

  • 水本 伸子

    短い文章でよくまとまっていて、読んでいてわくわくした気持ちになれます。未来にもサンタクロースがいて、子供に夢を届けてほしいと思います。

作品は日経ストアで無料配布しています

※ 利用開始登録(無料)が必要です。

ジュニア部門 優秀賞

「矛盾解消」

竹安 宏曜

2000年11月9日生まれ。2007年3月青山学院幼稚園卒園。2013年3月青山学院初等部卒業。2013年4月世田谷学園中学入学。現在に至る。

< 作者コメント >
夏休みにこの作品を書いたとき、このような賞をいただけるなんて夢にも思っていませんでした。家族全員で星新一さんのショートショートが大好きでしたし、僕個人も小学校の頃からあっと驚く結末を楽しみに読んでいました。そのため今回の受賞を大変光栄に思います。このような賞をいただけたので、もう一度星新一さんのショートショートを全部読み返してみたくなりました。

審査員コメント

  • 谷 甲州

    過去にもどってビッグバンを通り抜ける話は評者も何度か書いたことがある。そのときの経験からいうと、細部の描写にこだわることで、世界のスケール感が表現できるように思う。困難な作業だが作者にはがんばっていただきたい。

  • 冨田 勝

    この宇宙はビッグバンで始まりいずれ消滅し、再びビッグバンがおこる。これが繰り返されループになっていて、つまり過去をずっとさかのぼると未来につながっているのでは、という仮説に基づいたスケールの大きいストーリーをコンパクトに記述した興味深い作品です。

作品は日経ストアで無料配布しています

※ 利用開始登録(無料)が必要です。

第2回星新一賞の審査について

第2回の審査を語るにあたって、まず、今回の審査員の皆さんの熱意と素晴らしいご意見に、感謝と敬意を捧げたいと思います。
星新一賞の審査で特徴的なことは、毎回、基本的には新しい方々に依頼するということと、偶数の審査員構成をとるということです。理系文学という新たな視点を提示するにあたって、出来る限り多くの専門分野の方のご意見が必要と考えたからですし、最終的には多数決という手段を取りますが、結果だけではなく、そこに至る議論も重要であるという考えによるものです。この方法は、審査員の皆さんに多大な負担をかけることになりますが、今回もまた素晴らしい議論を聴くことが出来ました。司会進行のわたしも、思わず、皆さんのお話に引き込まれてしまうことがたびたびありました。
そうした多くの議論の中で、今回、特に多く語られたのは、理系的な思考、科学的な思考という問題でした。前回は科学に携る者の倫理ということが多く語られ、審査の結果にも反映されましたが、その直後に起きたSTAP細胞問題を先取りしていたように思います。
今回、語られた科学的な思考ということですが、最初に審査されたジュニア部門の冒頭から、科学的な思考が成されているかどうかが問われていました。ジュニアの作品について、そこに科学的な思考があるかないか、それを問うのは難しいところですが、今回語られたことは、たとえば、小学生の出したアイディアに対して現在の科学の立場からそれが妥当かどうか問うというようなことではなく、もっと基本的なことでした。ここでは具体的な作品については触れませんが、たとえば、何でも思った通りのものを作り出せる機械を発明したとして、それが生み出す物語を語るだけでは、ファンタジーと変わりません。なぜ、どのようにしてそれが可能なのか、そこを考えてほしいということなのです。それは難しいことを語るのではなく、そうしたことについて、ほんの一言でいいですから触れるべきだということです。それが現実に可能かどうかということではなく、そこに至る道筋を考えているかどうか、それが大事なのだということです。
もちろんこうした議論が、優れたアイディアや豊かな想像力を殺す可能性もあります。審査の中で、科学的な思考に欠けていても、アイディアや想像力で高く評価された作品も幾つかあります。それは、今回の審査員の皆さんが原理原則に忠実であると同時に、評価すべきものは評価するという建設的な方向で議論されていたことを示しています。
今回の審査で特徴的だったことをもう一つ挙げるとすれば、専門領域と応募作品との関係ということだったと思います。専門家は自分の専門領域に触れる作品に対して、厳しい評価をするのでは、と思っていたのですが、どうやらそれは逆なようでした。ご自分の研究領域に関わる作品に対しては、深い関心を持ち、柔軟な対応が成されていました。つまり欠点よりも長所を読み取って行くということであったと思います。時には作者の意図する以上の部分に言及されていくことがありました。そうした議論は、審査という枠組みを越えて興味深いものであり、審査員の皆さんの専門領域の最前線のすがたを垣間みることが出来ました。それは大変贅沢な時間でした。
最後に、今回の応募作品について簡単に触れておきます。今回の最終審査に残った作品は、一般、ジュニア部門共に、高いレベルにありました。特にジュニア部門のレベルの向上は素晴らしいものがあったと思います。今回から新設された優秀賞に当初予定した数を超えて入賞した作品があったことが、それを示しています。
今回の入賞作品、そしてそれに添えられた審査員の皆さんの講評は、次の応募にあたって大きな助けと励みになると思います。是非、ご覧ください。

日経「星新一賞」最終審査会
 司会進行 鏡明

PAGE TOP